第4回 「親想い」

 Eくんは3歳。でも赤ちゃんの頃から通っているので、トモエ歴は2年を越えています。Eくんの家は遠いので、お母さんは長い道のりを運転してトモエに通っています。それはとても大変なことだと思います。雪が降った日は雪かきを終えてから…冬は道路状況の確認を怠らず…昼寝の時間帯を、通園時間である車中で確保できるように調整したり…。トモエでの時間を一日の生活の中心に位置付けるよう、工夫して毎日の生活にリズムをつけているようです。そんなお母さんの姿には頭が下がる思いがしています。

 さて、そんな生活も2年が過ぎ、この頃Eくんは「ひとりでトモエに行ってみたい。」と言うそうです。お母さんはちょっぴりさびしいけれど同時に、Eくんの成長に頼もしさも感じています。私も本当にそう思います。Eくんにとってトモエが、ひとりでも行ける「安心できる場所」だと少しでも思ってもらえたことが、とてもうれしく思いました。

そんなふうにEくんは、時々ひとりでトモエに通って来ます。トモエは「親子で通う幼稚園」なので、ひとりで来る日は必ず「今日はひとりで来ている」ことを園内で明示しています。そうすると、ああ今日はひとりで来ているんだな、と周りの大人たちがわかってくれて、みんなが何となく目をかけてくれます。

Eくんがひとりで来ていたその日も、トモエに来ていたお母さんたちが、Eくん、こんなイイ表情して過ごしているよ~と写メールを送ってくれたりしたそうです。今頃大丈夫かな?とちょっとモヤモヤしていたお母さんは、そのライブ中継に、友人たちの優しい心遣いを感じることができたそうです。

何よりも、素敵なのはEくんの気持ちでした。心配するお母さんをよそに、Eくんはこう言ったそうです。「ママ、おうちにいて、Eのおもちゃであそんでていいよ。」と。なんて優しくて子どもらしい純粋な表現なのでしょう。自分が楽しいと思えること(おもちゃで遊ぶこと)を、お母さんにもおススメしたいということ。これはきっと、お母さんにも楽しいひとときを過ごしていてほしいと願っている気持ちの表れなのだと思います。

そして、Eくんが、自分の言葉で語ることができているのも素敵です。きっとふだんからお母さんが、Eくんの気持ちと言葉を大切にしているからなのだと思いました。そしてもちろんこの背景には、いつも自分とトモエに通ってくれて、いっしょに過ごしてくれてうれしいよ、というEくんの、お母さんへの感謝の気持ちが込められていることは、言うまでもないでしょう。

子どもは、親が思うよりずっと「親想い」なのだと思います。そんな自然な子どもの気持ちにあらためて気づかせてくれたEくんとお母さんに、ありがとう!

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