私は願う!女性の主体に対する自覚・認識が高まる社会を創造しつつある。すべての人間は母から産まれる。その命の尊厳は、母と子を核とした生活環境創りにあると。皆さんは、どう思いますか?
『人生を変えるもの』 ポール・トゥルニエ著 山口實訳 ヨルダン社 1974年より
私たちの文明が病んでいるのは、女性的価値を抑圧したからで、それによって一番損をしたのは男性自身なのです。しかし、男性はまだそれに気がついていません。ですから私は女性の皆様に強く申し上げたいのです。女性であっていただきたい。男性の真似をすることだけはやめてください。男性がもたらすことのできないものを皆様で世にもたらしてください。
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2005・06年度 文部科学省 人権教育開発事業 報告書
主 題 『人間の豊かな感性を養い、人間の尊厳を確立する基礎的人権教育の創造』より
(p148~p151)
脳科学者・養老孟司氏とアニメ作家・宮崎駿氏は『虫眼とアニ眼』(徳間書店)の中で、子どもの健全な発達と地域社会という視点から、次のような町づくりを提案している。
『生活のあり方をかえないと、この文明は亡びるぞ。家をかえよう。町をかえよう。子供達に空間と時間を!』
『まず、町のいちばんいい所に、子供達のための保育園(幼稚園もかねる)を! 子供達が夢中で遊べる所。地域の子供なら誰でも入れる所。いつの間にか、すべての感覚を使って身体を動かしてしまう所。コンクリート、プラスチックをかくし、木や土、水と火、いきものと触れる所。子供達が家へ帰りたがらない保育園をつくる。大人が手と口を出さなければ、子供達はすぐ元気になる。先生達の考え方が鍵だし、親の考え方を変えるのも大切。その裏づけになる空間が要るのだ。』
『町には中心になる空地がいります。盆踊りだの青空マーケットといった目的だけでなく、なんとなくあいてる空地が、おヘソとして必要なんです。一軒一軒はしっかりと工夫します。それに、60年はもつように建てること。おとなりと近すぎず遠すぎない空間の確保がカギです。』
『これは夢ではありません。ぼくらの心のふるさとがどこにあるのかを考えれば、実現する力も意味も、この国の人々は持っていると思います。』
トモエは常時園を開放し、家族が自発的に参加できる環境を創造してきた。乳幼児からお年寄りまで、様々な世代の人が毎日集う。子どもも大人も自発的に活動し、素直に自己を表現している。親しい人間関係を結び、信頼し合う関係を育んでいる。昔の長屋の生活のように、互いに支え合い助け合って生活することのできる、社会共同体的な生活教育環境となりつつある。
地域社会の人間性と教育力を回復し、親子関係をはじめとした豊かな人間関係を深めるためにも、全国各地に乳幼児期から親子で遊ぶことのできる自然公園を造ることを提案したい。
子どもたちは誰からも強制されることなく思いきり発散し、のびのびと夢中になって活動でき、親も一緒に遊ぶことで童心を取り戻し、無心に遊ぶ子どもたちから本当の子どもらしさを学び、人間性を刺激される、そんな公園である。
子ども時代の充実感と満足感が世代間で伝達されていくことで、親がリラックスして子育てを楽しむことのできる精神環境、社会全体で子どもを育てていこうとする精神環境を形成していくことができるであろう。
以下に、自然体験公園の一例を示して、具体的提案とする。
*森や林の中に清流がある、少し規模の大きい公園。
*木々や芝地の間に蛇行した比較的浅瀬の川を作る。
*川には岩・玉石・砂利・砂・土・粘土と、地質に変化を持たせる。
*それらの地質に適応しやすいメダカ・フナ・ドジョウ・カジカなどを繁殖させ、生き物との触れ合いの場とする。
*中州や川縁に木を植え、川面に緑が美しく映えるようにする。
*砂利の川底を浅くし、キラキラと輝き波打つ川面をつくる。
*泥んこ遊びのための、粘土質のヌルヌルした感触を楽しめる池をつくる。
*川の長さは、自然の大きさを感じるためにも1000メートルは必要。
*水量調整ができる施設も必要。
*川の中に水の流れる滑り台、飛び石の道、丸太の一本橋など、幼児も楽しめる遊具をつくる。
*花畑・雑草の茂み・原っぱ・林の中にぽっかりと空いた空間などもつくる。
*乳幼児とその親が遊びやすいように、蚊やブヨが近寄ってこない植物を植える。
*自然体験公園は自治体ごとにあって、各々工夫を凝らした特色あるものにした方がよい。休日を利用して親子で近隣の町の公園へ出かけることも考えられ、地域間交流は互いの自治体にとっての良い環境創りにプラスに働く。
*新聞広告やホームページで紹介し、宿泊施設とタイアップした列車の旅を企画するといったことも可能になる。
*アイディア次第で利用価値はいかようにも広がっていく。
乳幼児期は、親子関係にとっての蜜月である。子どもは親との信頼関係を基盤にして人格の基礎を築く。親は子どもから人間の尊厳を感じ取り、以後の家族関係や人間関係全般に大きな影響を持つ。子どもにとっても親にとっても大切なこの時期、自然の力を借りることで、人間の感性と可能性を最大限に引き出すことができるのである。乳幼児とその親たちが共に楽しむことのできる自然体験公園は、人間性あふれる社会を回復させることに寄与するであろう。
地域のあちこちに、子どもたちの笑い声が響き、大人たちの優しい眼差しが子どもたちの成長を見守っている、そんな環境を実現したいと、切に願う。
第4節 子育て支援策の拡充=乳幼児を最重要視し人間の尊厳を回復する働き方の変革
高度経済成長とバブル期を経て、我が国の社会は急激に変化した。中でも最も深刻な問題は、社会活動全般において「人間」の視点が欠落しつつあることである。
拝金主義的な企業姿勢は、安全性を軽視した商品の製造と販売を助長して、消費者をないがしろにしている。公官庁のみならず、あらゆる分野で自らの利得に目を奪われ、人間の幸せ・平和的な生活を構築する立場を忘れてしまっている例が多発している。
官庁や企業のモラルが著しく低下していることの第一の要因は、人間についての根本的な探究がなされていないことにある。
長時間の過酷な労働による過労死や中高年層の自殺、ニートの急増など、我が国の経済活動には大きな歪みが顕在化している。人間が人間として生きることの困難な社会にあって、そのしわ寄せは常に最も弱い部分に集中する。特に女性と子どもを覆う閉塞感は、我が国の将来の在り方を左右する、重大な問題である。
乳幼児期の子どもの情緒安定には、主として母親が子どもの側にいて、あたたかく見守り育むことが必要である。しかし、専業主婦の女性は、毎日がほとんど見返りのない家事育児の連続で、自分の時間を持つ余裕もない。夫は残業や休日出勤などで不在がちである上に、女性が職場に復帰することは難しい場合が多い。自分だけが社会に取り残されているという感覚を持つ女性は多数おり、苦悩している。地域が機能していない現代社会の中では、母と子が家の中で二人きりになりがちである。「母子カプセル化」の悪循環が進行するのは、当然の流れであろう。
一方、働く女性も疲弊している。産科婦人科学会が2005年に行った調査によると、働いている女性の6割以上が女性特有の体調不良を訴えており、さらに過半数がこれを相談しづらいと感じている。
子どもをもつ女性が正規職員として長時間拘束されると、子どもたちは長時間に渡って親から離され、保育園などに預けられなければならない。職場復帰とその後のキャリアなどを考慮すると、産休や育児休暇を削らざるをえない場合も多い。
人格形成の基盤である乳幼児期の生活環境を最も重視し、家庭環境を充実させるために、抜本的な改革が必要なのである。
各企業においては、子育て支援事業を展開している例がいくつもある。
*育児休業制度の整備(育児休業取得率の向上・対象となる子の年齢引き上げ・休業者への情報提供や教育訓練の実施・有期雇用者や嘱託社員への適用・など)
*勤務時間の短縮(短時間勤務制度・所定外労働の免除・始終業時刻の繰上げ繰下げ・フレックスタイム制度・ノー残業デイ・など)
*在宅勤務制度
*事業所内託児施設の整備(保育園利用者の時差出勤・保育料無料化・延長保育・など)
*次世代育成一時金制度(子育て支援金の支給・出産祝金・保育料やベビーシッター利用料への援助・カフェテリアプランの導入・など)
*出産・育児で退職した人の再雇用制度
*勤務地を限定ないし指定できる制度
*産休や育児休暇中の給与手当ての部分支給制度
*ファミリーフレンドリー休暇制度(本人を含む家族の療養看護、子どもの学校行事への参加、ボランティア活動などを目的とした休暇取得)
これらの子育て支援策に加えて、乳幼児の情緒安定と親子関係の構築を最重要視する視点から、さらに以下の政策を実施することを提案する。
(1)6歳までの乳幼児をもつ親の残業禁止の法制化。
乳幼児期は、母親を核として父親や周囲の人々と多く関わり合い、情緒を安定させ、人格を形成していく時期である。この時期には、親が側に寄り添い、育てることが必要である。母も父も共に、法定労働時間内に仕事を終えて帰宅し、子どもと過ごす時間を最大限に確保して、親密で良好な親子関係を構築できるように、社会全体で援助すべきである。
(2)親が職場に乳幼児を同伴し、仕事をしながら子育てができる環境の創造。
企業が失いつつあるモラルと人間性を回復するためには、人間として最も純粋で素直な乳幼児の視点を導入することが有効である。企業も公官庁も教育機関も、人間の匂いを感じ人間を育てる組織であることが重要である。
乳幼児を同伴して、大人が乳幼児とふれ合うことが多くなることによって、互いに人を育てる意識が高まる社会の創造につながる。社会の核としての家庭を重視した生活環境の創造になるのである。
(3)職場に乳児施設を設け、乳児と母親が2時間おきに関わることができる環境の創造。
0・1・2歳の乳児が長時間母親と離れていることは、その後の親子関係と子どもの精神的発達に大きな影響を及ぼす。この時期は、母親は産休を取って、ゆっくりと親子関係を築くことが望ましいが、やむを得ず母親が働く場合には、常に母子が関わることの可能な労働環境であることが必要である。事業所内に乳児施設を併設して、2時間おきに親子が関わり合うことができるように援助すべきである。
3歳以上の幼児の場合も、職場から可能なかぎり近い場所に、保育園や幼稚園を確保することが重要である。各自治体は、乳幼児を持つ親たちが安心して働けるように、また、子どもたちが情緒を安定させて日々を過ごせるように、幼稚園や保育園を整備すべきである。自然林や水辺を造り、乳幼児が自然と関わることのできる環境であることが望ましい。
(4)乳幼児を持つ親は、職場に歩いて通える距離に住居を構える最優先権を持つ。
安定した親子関係の形成を、通勤のための時間によって奪われないようにすることが必要である。
人間形成の基盤である乳幼児期は、親だけに育児の重責を背負わせてはならない。乳幼児を社会全体で見守り、すべての大人の責任のもとで育てる生活教育環境を創造しなければならない。上記の提案を、数十年かけても少しづつ実現させていくことを願う。
この報告書に記した提案は概略のみで、記述は不充分である。後日あらためて詳細を提言したいと考えている。
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忘れないでほしい
愛するものと過ごす時間を
それは永遠には続かないのだ
忘れないでほしい
もう逢えないかもしれない人の手を握り
その時間を慈しむことを
人生はどれだけ呼吸を
し続けるかで決まるのではない
どれだけ心のふるえる瞬間があるかだ
ジョージ・カーリン(アメリカのコメディアン)