自然が人間に与える影響~自然に勝る教師なし

 

①感覚への影響 ~ 五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)と複雑性を見分ける働きを鋭くする

子どもが草花の色や形を観察したり、鳥のさえずりや川のせせらぎに耳を澄ませたり、土や木の感触を手で確かめたり、森の中の匂いや新鮮な空気を感じたり、果実や野菜の自然な味を味わったりする体験は、五感を豊かに刺激します。こうした具体的な自然体験を通して、子どもたちは自分の感覚を研ぎ澄まし、外界への興味や注意力を高めることができます。自然の中での五感の働きは、子どもの健やかな成長や感性の発達にとって不可欠なものです。

また、自然の刺激は、色や音、におい、手ざわりなど、さまざまな特徴が組み合わさってとても複雑です。私たちはその複雑性を見分け自分にとって大切な情報を選び取る力を自然の中で育てています。こうした体験を重ねることで、五感がより鋭くなり、物事を深く感じ取れるようになります。  
 
 

②感性への影響 ~ 美しさや心地よさ、畏怖の感情など

 自然の中で子どもたちは、さまざまな感性を育てています。たとえば、朝露に光るクモの巣や夕焼け空の色の美しさに感動したり、森の中の静けさや川のせせらぎに心地よさを感じたりします。一方で、雷の音や暗い森に少し怖さや畏れを感じることもあります。花の香りや木の葉の手ざわり、虫の鳴き声など、自然の多様な刺激を体験することで、「きれい」「気持ちいい」「ちょっと怖い」といった感情が生まれます。こうした体験を重ねることで、子どもたちは自分の感性を豊かにし、物事を深く感じ取る力を身につけていきます。  
 
 

③身体への影響 ~ 機敏性、敏捷性、バランス感覚、複数の感覚の協応など

自然の中で遊ぶことは、子どもの機敏性や敏捷性、バランス感覚、そして複数の感覚を同時に使う力を育てます。例えば、森の中で木登りをしたり、でこぼこした地面を走ったりすることで、足元の変化に素早く反応し、転ばないように体を調整する力(バランス感覚)が身につきます。また、川で石を飛び越えたり、虫を捕まえたりする時には、目で見て手を動かすなど、視覚と運動を協力させる力(感覚の協応)が必要です。こうした体験を重ねることで、子どもたちは自分の体を思い通りに動かす力や、危険を察知して素早く対応する力が自然と身につきます。自然の中での遊びは、人工的な運動よりも多様で予測できない動きが多いため、身体の発達にとても大切なのです。
 
 

④思考への影響 ~ 神秘や不思議さ、様々な要素の関係性の追求など

自然は、私たちの「考える力」を育ててくれます。たとえば、森の中で「なぜ木の葉は緑なのか」「どうして川の水は流れ続けるのか」と疑問を持つことで、子どもたちは自然の神秘や不思議さに気づきます。また、雲の形や虫の動きなど、さまざまな要素がどのようにつながっているのかを観察し、考えることで、物事の関係性を追求する力が身につきます。こうした体験を通して、子どもたちは自分で考え、答えを探す楽しさや大切さを学び、思考力が豊かに育まれていきます。  
 
 

⑤認識への影響 ~ 発見、知覚、観察、気づき、確認、理解、本質の追求など

自然の中で過ごすと、私たちは多くの「発見」や「気づき」を体験します。例えば、森で珍しい虫を見つけたり、葉っぱの形や色の違いに気づいたりすることは「観察」や「知覚」の力を育てます。川の水が冷たい理由を考えたり、鳥の巣がどこにあるかを探して「確認」したりすることで、自然の仕組みを「理解」しようとします。こうした体験を重ねることで、「なぜ?」と疑問を持ち、「本質」を追い求める力が育ちます。自然の中での発見や観察は、教科書だけでは得られない深い学びにつながり、自分で考え、確かめ、理解する力を伸ばしてくれます。これが、自然が私たちの認識に与える大きな影響です。  
 
 
 

⑥想像性への影響 ~ 自然の素材や現象から具体物や新たな形や意味、物語や構造を心に描く

自然は様々な素材あふれ、また様々な現象を生みます。子どもたちは、雲の形を動物や乗り物に見立てたり、盛った砂の上に木の枝や石を乗せてケーキを作ったします。また、森の中で聞こえる鳥の声や風の音から物語を考えたり、川の流れを見て冒険のシーンを思い浮かべたりしています。自然の素材や現象は、決まった形や意味がないからこそ、自分の頭の中で自由に新しいものを生み出すことができるのです。こうした体験を通して、私たちは自分だけの世界を想像し、表現する力を育てることができます。自然は、想像性を豊かにする最高の舞台なのです。してそれは、心に描いたものを具体的な形に作り上げる創造性の元です。
 
 
 

⑦精神への影響 ~ 癒し、リラックス、好奇心、集中力、忍耐力、希望、直感など

森の中で木漏れ日を浴びていると、心が落ち着き安心した気持ちになります。川のせせらぎや鳥のさえずりを聞いてリラックスしたり、虫や花を見つけて好奇心がわいたりします。木登りや石の上を渡るときは、集中してバランスをとり、うまくいかないときも何度も挑戦することで忍耐力が育ちます。また、雨上がりの虹を見て希望を感じたり、自然の中でふと「こうしたらうまくいくかも」と直感が働くこともあります。このように、自然は子どもの心に癒しや勇気、前向きな気持ちを与え、精神を豊かにしてくれます。自然が人間の精神に与える影響はとても大きく、私たちが健やかに成長するために欠かせないものです。
 
 
 

⑧超越感覚への影響 ~ 自然や宇宙の摂理や秩序、神

夜空に広がる無数の星を見上げたり、山の頂上から広大な景色を眺めたり、海の波のリズムや森の静けさに身をゆだねたりすると、私たちは自分の力ではどうにもできない大きな存在や秩序を感じます。春になると花が咲き、秋には葉が色づく自然のサイクルや、太陽や月の動きなど、宇宙の摂理や規則正しさに気づくこともあります。こうした体験を通して、「なぜ世界はこうなっているのだろう」「人間は自然の中でどんな存在なのだろう」と考えたり、目に見えない神秘的な力や神の存在を感じたりすることがあります。自然は、私たちに日常を超えた大きな感覚や畏敬の念を与え、人間の心を豊かにし、謙虚さや感謝の気持ちを育てる大切な役割を果たしています。