大家族的なつながりの中で生きるということ
子育てをしていると、嬉しいことや幸せな瞬間がたくさんありますよね。初めて笑った日、初めて歩いた日、小さな「できた!」に一緒に喜べるのは、親にとってかけがえのない時間です。
けれどその一方で、どうしてこんなにしんどいんだろう、誰にも相談できない、と孤独に押しつぶされそうになる日もあると思います。夜泣きが続いたとき、イヤイヤ期で思うようにいかないとき…「私だけが大変なんじゃないか」と感じた経験はありませんか?
実はその孤独こそが、現代の子育ての大きな問題なんです。核家族化が進み、地域のつながりが薄れた今、私たちは昔のように祖父母や近所の人に気軽に助けを求めることが難しくなっています。まるで、一人ひとりがバラバラに存在している水分も栄養も保てない砂のような「単粒構造」的な社会。そこでは、困ったときに手を差し伸べてくれる人が見つからず、心が疲れてしまいます。
でも、子育ては本来「一人で頑張るもの」ではありません。人間は群れで生きる動物です。誰かとつながり、支え合うことで安心感を得て、心のバランスを保てるのです。
助け合える関係を取り戻そう
たとえば、あなたが体調を崩したときに、子どもを安心して預けられる存在がいたらどうでしょう。ちょっとした外出のときに「任せて」と言ってくれる親友のような家族がいたら、どれだけ心強いでしょうか。
トモエの実践では、親たちが顔を合わせて交流する中で、自然とそうした関係が育まれています。子どもを預け合ったり、卒園した家族が赤ちゃんを抱っこして手助けしたり。そこには、血のつながりを超えた「大家族」のような支え合いがあります。
特に心を許せる「親友家族」との出会いは、人生を大きく変えてくれます。何十年も続く関係になり、お互いの子どもたちが大きくなっても助け合える。そんな関係が一つでもあることが、子育てをぐっと楽に、そして豊かにしてくれます。
ありのままの自分でいられる場所
子育てをしていると、「ちゃんとしなきゃ」「失敗しちゃいけない」と肩に力が入りがちです。でも、大家族的な環境のいいところは、みんながありのままの自分でいられること。
ここでは、世間体や建前に縛られる必要はありません。失敗しても「大丈夫、大丈夫」と笑って許し合える雰囲気があります。お母さん同士がおしゃべりをしながら悩みを打ち明け合い、励まし合う。子どもも大人も自分のペースで過ごし、それを受け入れ合う。そんな環境は、心をふっと軽くしてくれます。
自分を認めてもらえる体験は、相手を認める心にもつながります。子どもたちにとっても、いろんな大人と関わりながら「人は失敗しても大丈夫」「誰かが助けてくれる」と学べる場になるのです。
幸せと平和を育む子育て
子育てを支え合う大家族的な暮らしは、実は私たちの幸せや社会の平和にもつながっています。親しい人とのつながりから生まれる安心感は、家庭を小さな共同体にし、そこから温かな連帯が広がっていきます。
「家庭の中に幸せがある」――それは決して小さなことではありません。家庭という小さな平和の単位が積み重なることで、社会全体の平和が築かれていくのです。だからこそ、子育て世代が孤立せず、助け合える環境を持つことは、私たち一人ひとりの未来にも大きな意味を持っています。
土に学ぶ、つながりのちから
この環境をわかりやすく表すと、土壌学で言うところの「団粒構造」と言えます。団粒構造の土はふかふかで柔らかく、水も空気もよく通り、栄養分も保たれ作物が元気に育ちます。
社会も同じです。人と人がバラバラに孤立するのではなく、しっかりと結びつき、お互いに支え合うことで、子どもも大人も健やかに育つことができます。私たちの家庭や地域が団粒構造のようになったとき、子育てはもっと楽しく、もっと豊かなものになるでしょう。
一人じゃないから大丈夫
子育ては、確かに大変です。思い通りにいかず、涙が出ることもあるでしょう。でも、それを一人で抱える必要はありません。あなたのまわりには、きっと支え合える仲間がいるはずです。そして、これから出会える人もたくさんいます。
大家族的な人間関係を取り戻すことは、子どもにとっても、親にとっても、そして社会にとっても大きな希望です。「一人じゃない」と思えるだけで、心はずっと軽くなります。
どうか子育てを孤独にしないでください。誰かとつながり、支え合いながら進んでいきましょう。その中で、子どもも親も、きっともっと幸せに、もっと自由に生きていけるはずです。