「自分を好きになり、他の人も好きになる生活環境」を子育てに
子どもを育てる中で、私たち親は「わが子が幸せに生きてほしい」と心から願います。では、その「幸せ」とは一体どこにあるのでしょうか。
トモエコミュニティが大切にしているのは、子どもたちが「自分を好きになり、同時に他の人のことも好きになれる」生活環境をつくることです。これは単なる教育理念ではなく、日々の暮らしの中でこそ実感できる大切な土台です。子どもが自分を愛し、周りの人と心地よく関われる環境は、親にとっても安心であり、家族の幸せそのものにつながります。
幸せの原点は「好き」という気持ち
人間にとって最大の幸せは、人と人が互いに好き合って生きることではないでしょうか。
振り返ってみれば、親として本当に幸せを感じる瞬間は、子どもが友だちに囲まれて笑っている姿を見た時ではないでしょうか。多くの人に「あなたが好き」と言ってもらえること。そして自分もたくさんの人に「好き」と伝えられること。これこそが生きる喜びの源です。
トモエの環境では、子どもたちが自然に「好き」という感情を表現し合える場が育まれています。そこから湧き上がるのは、毎日を生きる新鮮な喜びです。そしてその喜びは、私たち親の心をも明るく照らしてくれます。
自分を好きになることがすべての始まり
子どもが人を好きになるためには、まず自分を好きになれることが大切です。
「自分なんてだめだ」と感じてしまう心からは、人を信じたり尊重したりする気持ちは生まれにくいのです。だからこそ、自己肯定感を育むことが子育ての大きな鍵となります。
スイスの精神医学者ポール・トゥルニエ博士は「子どもは大人から敬意を払われることで、自分の尊厳を自覚する」と述べています。親が子どもを一人の人として尊重し、信じてあげること。それが「自分は大切な存在なんだ」と子どもが感じる基盤になるのです。
乳幼児期に親から「愛されている」「信じてもらえている」と実感できる子は、自分を尊い存在だと感じられます。その自己肯定感があれば、成長してからも他人と健全に関わり、人生を前向きに歩んでいけるのです。
ありのままを受け入れ、素直に生きる
現代社会では、衝突を避けるために「建前」や「笑顔の仮面」をかぶりがちです。しかしそれでは、子どもも大人も心から人を好きになることはできません。
子どもにとって本当に大切なのは、ありのままの自分を受け入れてくれる場所です。失敗しても、泣いても、怒ってもいい。そのままの姿で「あなたはあなたでいいんだ」と認めてもらえることが、子どもの心を強くします。
トモエでは、子どもたちが素直に自分を表現できる環境があります。ありのままの自分を出せるからこそ、友だちの個性も丸ごと受け入れられるようになります。「共感できる部分もあれば、違う部分もある。でもその全部があなた」という気づきが、心を豊かにしていくのです。
そして実は、子どもたちの素直さは大人にも気づきを与えてくれます。子どもの瞳に映る自分の姿は、誠実さの鏡です。「自分も素晴らしい存在なのだ」と親自身が学び直す機会にもなるのです。
実際の生活の中で育つ幸せ
「自分と人を好きになる生活環境」は、日々の実践を通じて形作られます。
トモエでは、子どもが自ら「好きな人」を見つけ、そこから人間関係を広げていくことを大切にしています。好きな人と過ごすことで心が満たされ、自然と友だちの輪が広がっていきます。その中で「心の友」と呼べる存在に出会うことは、人生を支える大きな力となります。
親も子もスタッフもみんなで深く関わり合うトモエの生活は、人と人とのつながりそのものを「共有財産」としています。こうした関係性の中で、心地よい生活環境が生まれ、そこに幸せと平和の土台が築かれていくのです。
子育ては日々の挑戦の連続です。しかし、子どもと共に「自分を好きになり、人を好きになる」体験を積み重ねていくことで、親にとっても人生をより豊かにする学びが広がっていきます。
おわりに
子どもが自分を好きになり、周りの人を好きになれる。そんな環境を家庭や地域に広げていくことこそ、子育て世代にとっての大きな願いではないでしょうか。
トモエコミュニティの実践は、親にとっても「どう生きるか」を考えるヒントに満ちています。わが子と共に育ちながら、心から人を好きになれる生活を一緒に歩んでいく。それが私たち家族の幸せの形であり、次の世代へとつながる贈り物になるのです。